東京高等裁判所 昭和47年(ネ)2564号 判決 1973年11月16日
控訴人
株式会社並木屋
右代表者
岡島釜之助
右訴訟代理人
音喜多賢次
被控訴人
株式会社東部産業
右代表者代表清算人
山崎トミ子
右訴訟代理人
松島政義
右当事者間の昭和四七年(ネ)第二五六四号不当利得返還請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
理由
当裁判所は、被控訴人の不当利得に基づく請求を排斥し、担保責任に基づく請求を認容すべきものと考えるが、その理由の詳細は、次に付加訂正するほかは、原判決の理由欄(ただし、第二を除く)に記載のとおりであるから、これを引用する。
一、原判決一三枚目表三行目の「原田昌洪の所であつた」とあるを「原田昌洪であつた」と改め、同一一行目の「甲第一七号証の前に<甲第二号証>を加える、
二、同一三枚目裏(2)の全文を削除し、ここに新たに、「原田昌洪は森田みよ子の夫である森敏郎に金銭を貸与していたが、その貸金の代物弁済として森みよ子がその所有のB建物を昭和四二年二月頃原田昌洪に譲渡したので、同人は前記競落許可決定のあつた昭和四二年八月三日当時B建物の所有者であつたこと、」を加える。
三、原判決一五枚目表九行目から同裏四行目の「と解する。」までを削除し、ここに新たに「売主の担保責任を追求するための民法五六四条の期間は除斥期間と解すべきである。そして、本件においては、競落人が配当を受けた抵当権者に対し配当金の返還を請求するものであるが、この場合の除斥期間は、競落人において、競落物件の全部または一部が他人の所有であるため、その所有権を取得できないこと、および、債務者が無資力であることを確知した時を起算点として計算すべきであると解する。その理由は、右の除斥期間は競落人が担保責任を追求することができるのに一定の期間これが追求の権利を行使しない場合には、その期間経過後は権利行使を許さないとするものである。そうすれば、その権利行使をしようとする者が権利を行使することができる場合でなければならないところ、本件についていえば、競落人において競落物件の一部が他人の所有であるためその所有権を取得できないこと、および債務者が無資力であることを知つたのちでなければ、その権利行使ができないからである(最高裁判所昭和四八年(オ)第一五七号、昭和四八年七月一二日第一小法廷判決参照)。」を加える。
四、原判決一五枚目裏一一行目の「数日後」とあるを「数日後)」と改める。
そうすれば、被控訴人の担保責任に基づく請求を認容した原判決は相当であり、控訴人の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。
よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。
(満田文彦 鰍沢健三 鈴木重信)